●『宮野村子探偵小説選ＩＩ』 論創社 読了。
好みというのはどうしようもないもので、私が望んでいるのはやはり、ブンガク趣味よりも探偵趣味、あるいは怪奇趣味なのである。宮野村子を読むのは二冊目なので、その作風が暗い情念を息の長い文章でねっとりと描くものであることが分かっている。しんどい読書になることをあらかじめ覚悟して臨んだおかげで、ちょっとでもミステリ的な趣向が盛り込まれている作品であれば、それだけで面白く読めた。
以下、気に入った作品を挙げておく。真相発覚のきっかけが読み所の「いたずら小僧」、動機の特異さが際立つ「紫苑屋敷の謎」、怪奇小説すれすれのグロテスクな味わいの「銀杏屋敷の秘密」、コントのようなオチが上手く決まった「ナフタリン」、ミステリ的興趣と同時に人間の業も感じさせる真相の「二冊のノート」、ってなところ。他に題名だけ挙げておくと、「令嬢殺人事件」、「神の裁き」、「ヘリオトロープ」、といった辺りが気に入った。
それにしても、だ。この文体この内容の作品が延々と続く本書を読み通すのは、実にしんどかった。疲れた。
