累風庵閑日録

本と日常の徒然

『必須の疑念』 C・ウィルソン 論創社

●『必須の疑念』 C・ウィルソン 論創社 読了。

 かつての教え子は、連続殺人鬼なのか。主人公の哲学者ツヴァイクの、恐ろしい疑念である。証拠も確信もない推定殺人者と、命を狙われているかもしれない想定被害者とを、ツヴァイク達が追跡する。シリアスなサスペンスかと思っていたら、そればかりではない。奇妙な夫婦者が追跡者一行に加わり、なにやら珍道中の趣を呈する場面もある。

 読み所は以下のようなところ。果たして「彼」は実際に殺人鬼なのか。ツヴァイク達はその証拠をつかめるのか。次なる殺人を防ぐことができるのか。その他、人物造形も面白い。哲学者殿はやけに人間臭く、美女にちやほやされてたちどころに篭絡されたりする。

 結末までたどり着くと、どうやら作者殿、(伏字)。その一方で、作中で語られる議論がなかなか興味深い。どこまで理解できたか心もとないけれども。議論に伴って、人物描写が次第に深みを増してゆく。そっち方面の面白さがあるので、全体としてほぼ満足のいく読後感であった。

●お願いしていた本が届いた。
『殺されたのは誰だ』 E・C・R・ロラック 風詠社
 先日、honto経由でリアル書店への取り寄せ依頼をして、「品切れ取り寄せ不能」の回答が返ってきた。しょうがないので宅配で再発注して、無事に入手できた。やれやれ。hontoでは、ネット書店向けの在庫とリアル書店向けの在庫とで扱いが別になっているようで。