●『銀の墓碑銘』 M・スチュアート 論創社 読了。
まず、オープニングが魅力的。私には何も起こらない、と思っていた主人公に突如降りかかった、奇妙な人違い。その出来事をきっかけに、彼女は自ら冒険に巻き込まれてゆく。まるでクリスティーの冒険スリラーのようである。
序盤で示される、第二次大戦秘話という題材が私好み。そして終盤で見えてくるもうひとつの題材は、それで物語世界が一気に広がるインパクトがある。
嬉しいのが、些細な伏線があちこちに散りばめられていることで。この、些細な、というのがポイント。あとで指摘されてからページを戻り、おお、気付かなかったけどここにしっかり書いてあった、なるほどなるほど、と確認する作業の楽しさよ。
全体として、題材も展開もなかなかの良作であった。