累風庵閑日録

本と日常の徒然

『大倉燁子探偵小説選』 論創社

●『大倉燁子探偵小説選』 論創社 読了。

 手に取ったのは先週の日曜だが、内容に乗れずに中断して別の本に寄り道して、今日になってどうにか読了。とうとう最後まで気分は醒めたままであった。詳しくは書かないが、作者のスタイルは私の好みから遠く隔たっている。

 ただ、面白かった作品もいくつかある。前半のS夫人シリーズでは、ちょいと捻りのある「妖影」と、はっきり書かないことで鬼気迫る効果をあげている「情鬼」の二編。

 後半の単発作品では、異色な怪談咄の「むかでの足音」と「魔性の女」、展開の速さと捻りのある構成とがちょいと読ませる「青い風呂敷包」、グロテスクな味わいが漂う「魂の喘ぎ」と「和製椿姫」といった辺り。

 ベストは「恐怖の幻兵団員」で、作者の用意した意外さに上手く乗せられたおかげで楽しめた。発端となった出来事が解決していないように思えるのがちと気になるところであるが。