バラエティに富んで上出来な怪奇小説アンソロジー。気に入った作品を、一言だけコメントを添えて並べる。
まあそうなるわな、とは思うが捻りの存在そのものが嬉しい、オーガスト・ダーレス「幽霊」。些細な記述が意外にも伏線だった、ロジャー・W・トーマス「ブラッドレー家の客」。失われた過去を回想して叙情的な、マデリーン・レングル「愛しのサタデー」
日野日出志のマンガになりそうな、ウィリアム・バンキアー「おぞましい交配」。暴走したサラマンダーをどうやって退治するか? という怪獣小説、ポール・アンダースン「サラマンダー作戦」。結末で想像力を試される、レイ・ブラッドベリ「十月ゲーム」
そして、個人的な好みもあるけれども、やはり頭抜けて別格なのがモンタギュ・R・ジェームズ「バラ園」である。抜けない杭、幼い頃の悪夢、今まで聞いたこともないような鳴き声のふくろう、何者かが植え込みを荒らしているような騒音。読者の想像をぐいぐい刺激する書きっぷりが、まったく素晴らしい。
●なんとなく古本屋を覗き、なんとなく購入。
『マクベス夫人症の男』 R・スタウト ハヤカワ文庫
『六一八の秘密』 野村胡堂 ソノラマ文庫
購入数には含めないけれども、『悪魔の家』 横溝正史 角川文庫 もついでに買った。