累風庵閑日録

本と日常の徒然

『甦る名探偵』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『甦る名探偵』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。

 角田喜久雄「霊魂の足」がベスト。複雑な犯罪の経緯がよく考えられている。梅雨時の湿気に悩まされる加賀美の様子が執拗に描かれ、この作者らしいねっとりとした雰囲気が迫ってくる。そして、ビールが旨そう。

 楠田匡介「雪」は、その密室ネタは発表当時どの程度斬新なものだったのか。それとも逆に陳腐だったのか。当時の位置付けはいかに。という点が気になる。

 大坪砂男「三月十三日午前二時」は、破天荒でスケールの大きな真相が面白い。これが大坪砂男作品の標準的な味わいなのだろうか。こういう癖の強い作風は、アンソロジーで一編だけ読むならいいが、買ってある創元推理文庫の個人短編集を読むのはちとしんどそう。

 飛鳥高「犠牲者」は、アンソロジーなんかで何度か読んだが、再読してもやっぱり面白い。ロジカルなアプローチで奇抜な真相に到達する展開は、地に足の着いた奇天烈さとでもいうべき味わいがある。

●本が届いた。
朝顔金太捕物帳』 横溝正史 捕物出版
 金太シリーズ全編が一冊にまとまるのは初めてのことで、しかも初出時の挿絵も収録されているなんざ、なんと素晴らしいことか。捕物出版さんからは今月のみならず、来月も再来月も、佐七以外の横溝捕物小説が刊行される予定である。全力で応援したい。

●先日問い合わせした某図書館から返事をいただいた。思ったより早くて、ありがたいことである。資料のコピー代は先払いだというので、早急に対応する。