累風庵閑日録

本と日常の徒然

「片耳の男」

●某図書館から、昭和二十五年十二月に『少女サロン』に掲載された、横溝正史「片耳の男」のコピーが届いた。初出は昭和十四年九月の『少女の友』で、原題は「七人の天女」である。その後、昭和二十九年に偕成社の『青髪鬼』に「片耳の男」の題で、昭和三十年にポプラ社の『まぼろし曲馬団』に「七人の天女」の題で、それぞれ収録されている。また、角川文庫およびソノラマ文庫では『迷宮の扉』に収録されている。

 ここで問題なのは、ヒロイン鮎沢由美子の兄の研究対象が、年代によって異なっていることである。まず初出では「飛行機に関係がある」、『青髪鬼』版では明記されず、『まぼろし曲馬団』版では「ジェット・エンジンに関係がある」となっている。三種類のバージョンがあるわけだ。ここまでの話は、以前の日記にも書いたことがある。

 今回コピーを入手した目的は、おそらく戦後初の活字化と思われる『少女サロン』版では研究対象はどうなっているのか、確認することにある。結論として、対象は明記されていなかった。これほどまでに「だからどうした?」という案件もそうはないだろうが、抱えていた宿題をやっと終えた感じで、気分がいい。

●先日コピー依頼をした別の図書館からリアクションがあった。こちらの依頼内容をちゃんとした書式に直したので、内容を確認せよと仰る。間違いない旨回答した。今後、先方からコピー代金納付書のようなものが送られてきて、入金確認後にコピー作業が行われる段取りになっている。実際にブツを手にできるのは来週末くらいになるだろうか。