●『さよならブルートレイン』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。
寝台特急ブルートレインを題材にしたアンソロジーである。森村誠一「殺意の接点」は、崩すべきアリバイの堅牢さも、複数の要素を反映した真相も、ちょっとしたもの。島田一男「新婚特急の死神」は、真相の素朴さが今となっては味わい深い。
時刻表アリバイネタは、手順が多くなればなるほど「机上の空論感」が強くなる。姉小路祐「ダブルライン」にもその気があるのだが、別の要素が捻りとして働いていて、読後感は悪くない。
収録作中のベストは西村京太郎「殺人は食堂車で」であった。よくあるトラベルミステリならば、早い段階で犯人がほぼ確定され、その後は容疑者のアリバイ崩しが主題になるところである。ところがこの作品では、（伏字）なる切れ味は予想以上であった。
●某氏にちょっとした問い合わせを差し上げていたのを、わざわざ葉書で御回答いただいた。ありがとうございます。これで腑に落ちました。
