累風庵閑日録

本と日常の徒然

「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」第二十回

●横溝プロジェクト「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」の第二十回をやる。今回は、昭和十五年に博文館から出た『風雲ゼンダ城』から、第一部「ゼンダ城の虜」を読む。

 うむ、こいつは面白い。欧州の架空の国ルリタニアを舞台にして、今となってはベタなそっくりさんネタが繰り広げられる。物語の枠組みは、ゼンダ城に捕らわれの身となっている国王を救い出すというシンプルなもの。

 主人公ルドルフの造形はいかにもな好漢だし、対する美青年ルパートは強くて悪くて太々しくて、堂々の敵役。分かりやすいキャラクターが、余計なノイズがない分かりやすい活躍をする。アクションシーンは熱いし、終盤の盛り上がりはどうだ。世の中には「ルリタニアン・ロマンス」なるジャンルがあるそうで。この分かりやすさはもはや普遍となっているのであろう。

●このプロジェクトは毎月後半に行うのを恒例としているのだが、第二十一回は来月早々に実施し、本書の第二部「驕児ルパート」を読みたい。日にちが経つと第一部の内容を忘れてしまうからである。いっそ一部二部を一気に通読すればいいようなものだが、そういう気分ではない。

 そしていつか機会があれば、創元推理文庫で出た完訳版を読めたらいいと思う。できれば間を置かずに読んで、正史の訳業を検証したいのだが、さすがにそこまでやるには気力と勢いとが足りない。そもそも持ってないからまず買わないといけないし。市立図書館に所蔵されているらしいから、借りて読んでしまうのも手だけれども。