累風庵閑日録

本と日常の徒然

『新羽精之探偵小説選II』 論創社

●『新羽精之探偵小説選II』 論創社 読了。

 捻りとオチがあって、私の好み直撃。極めて打率の高い、充実した短編集であった。「ボンベイ土産」は題材に工夫有り、というより、何が題材なのかこそが眼目。「ロマンス航路」は、途中のエピソードもオチも好ましい。「時代おくれの町」は、じわじわと盛り上がってくる違和感の恐怖。そして切れ味が素晴らしい「僞眼のマドンナ」。

 その他気に入った作品は数が多いので題名だけ挙げておくと、「河豚の恋」、「華やかなる開館」、「平等の条件」、「自由の敵」、「ニコライ伯父さん」、「黄金の鵜」といったところ。

●以下、余談。論創海外ミステリの今月の新刊、ラインハートの『憑りつかれた老婦人』は、「憑りつかれた」という特異な表記に違和感がある。ところが世の中にはこういった用例が存在するのだそうな。という内容は先日も書いた。そしてなんと、『新羽精之探偵小説選II』に収録の「日本西教記」にも同様の表記があるのであった(P224)。