累風庵閑日録

本と日常の徒然

『サンキュー、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『サンキュー、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。

 主人公バーティーの身の上に、トラブルそしてまたトラブル、一難去ってまた"八"難が降りかかる。偉大なるジーヴスはそれらの難問を軽やかに、また鮮やかに処理してゆく。

 構成の緊密さが驚異的。伏線とその回収というシークエンスが、複数同時並行で、しかも何度も繰り返される。その積み重ねは、全編を通して膨大な量になる。

 全てが作り物の世界である。全ての要素が、面白さを演出するための部品である。作者の筆先は自由自在、縦横無尽に動き回り、人の動きも考え方も感じ方も、物事の巡り合わせもあらゆる偶然も、それぞれ部品となって物語の面白さに奉仕する。

 本書に対して傑作との賛辞を呈しますことに、いささかなりとも御躊躇いの御存念がおわしますならば、僭越ながらそのような御懸念は無用なものであると表明いたすことをお許しいただきたいと存じます、というやつだ。