累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ブロの二重の死』 C・アヴリーヌ 創元推理文庫

●『ブロの二重の死』 C・アヴリーヌ 創元推理文庫 読了。

 瀕死の重傷を負って自宅で発見された、殺人課課長のフレデリック・ブロ。だがその傍らには、死体となったブロが横たわっていた。突拍子もないオープニングである。捜査が進むにつれて、この空想めいた特異な事件は次第に変貌し、いわば地に足が付いた特異さともいうべき様相を呈してゆく。突拍子もない背景である。

 これがフランスミステリというやつか、主人公の語りには叙情的な文言がやけに紛れ込む。メロドラマ色が漂う。二百ページ少々しかないのに、冗長さを感じてしまった。展開のあっけなさにも、あれれと思う。これがフランスミステリというやつか。

 だがある一点にはちょいと感心したし、そのポイントのおかげで読後感はそれなりに良い。その詳細はもちろん公開では書けない。