累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三回をやる。今回は第一巻の収録作から「バスカーヴイルの犬」を読む。訳者は延原謙である。今までに何回も読んでいるから、さすがに内容は大体憶えている。そんな状態で読むと、構成の上手さに感心する。

 岩窟に住む謎の男なんてのを登場させるのも、小道具としてのツイードの服の使い方も、上手いものである。要所要所の「つかみ」もお見事。たとえば爪先立った足跡の意味、死体の傍の犬の足跡、片方だけ盗まれた靴、などなど。荒野の情景描写も読み所。

 今回は、訳が古いからこその文章の味わいにも目が行った。たとえば第十章の、十月十七の日記冒頭は「霏々として終日止まざる雨は、蔦の葉を打ち、涓滴の音絶えず」ってなもんで。現在流布している他の訳文と比較してごろうじろ。

●昨日は、由利先生もののドラマ「花髑髏」が放送された。テレビを観る環境がないので無視していたのだが、ネットで配信されていることに気付いたので今日になって観てみた。

 上手くまとめたなー、というのが感想。尖り過ぎている部分をテレビ向けに矯めて、全体的に物語が整理・洗練されている。その結果、原作の破天荒で毒々しい魅力がちと大人しくなってしまったように思うが、そもそもドラマ化できるかどうかがかかっているのだから、改変の意義は大いにあると言っていいだろう。