奇妙な理屈がぐるぐる回っていて、不思議な味わい。特に第一話と第二話とは、いったいどのように受け止めればいいのかさっぱり分からない。
第三作「監視人失踪事件」に至ってようやく、かなり特異な内容ではあるがミステリとして読むことができた。そして第四話「大女殺人事件」はちょっとした秀作。事件の真相は整った骨格をしているのだが、それをとりまく歪んだ人々の歪んだ思考が、状況を散々に歪ませてしまう。
それにしても、読者にははたして理解することが求められているのか。特に前半、どうやって鑑賞すればいいのか、という態度がそもそも間違っているのかもしれない。理解する、鑑賞する、といった読書の営みを揺さぶってくるような作品集であった。