●『約束』 Ｆ・デュレンマット ハヤカワ文庫 読了。
のっけから、廃人となった元警部が登場する。語り手の、これも引退した元警官によると彼は天才的な名警部だったらしい。それがどうしてこんな有様になったのか。最初から破局が明示されている訳だ。
かの元警部が現役時代に担当した事件は、どうやらシリアル・キラーの可能性もある。それが一応の決着を見てから後の展開が、なんとも異様である。そして結末も異様。
副題には「探偵小説へのレクイエム」とある。語り手はミステリ小説に否定的である。現実の事件とは違い、最後に必ず犯人が罰せられるように作られたおとぎ話だそうで。実際は論理よりも偶然が事件解決を大きく左右すると仰る。そんな言葉と、この内容。
巻末の訳者あとがきによると、全体がミステリに対する皮肉だという。とはいってもミステリ的な面白さは十分。展開と熱量とで記憶に残る秀作であった。
●お願いしていた本が、二方面から届いた。
『人形佐七捕物帳 四』 横溝正史 春陽堂書店
『地主館の罠』 Ａ・リンドグレーン 岩波書店
