累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第四回

●書店に寄って本を買う。
『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』 T・ゴス ハヤカワSFシリーズ
ハヤカワSFシリーズを買うのは初めてだ。

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第四回をやる。今回は第一巻の収録作から「恐怖の谷」を読む。訳者は妹尾アキ夫である。読むのはたぶん三回目。前回読んだのはちくま文庫の詳注版ホームズ全集で、十二年前である。

 前半は今となってはお馴染みのネタで、そのおかげで全体がよく整っている。特筆すべき意外さはないけれども、型通りな味は私好み。

 後半はまるで初期のハードボイルド。というのはハメット「赤い収穫」からの単純な連想だけれども、こういうのもたまに読むなら悪くない。こちらにも大ネタが使われていて、ホームズ譚にしては珍しい。ネタを知って読むと、記述が少々際どいようであるが。

 ところで、ここで描かれているホームズのキャラクターはタチが悪い。情報を共有せずに意味不明の行動だけを要求する。ほのめかしやはぐらかしを繰り返して、チームの一員からの質問にまともに答えない。こんな人物は、組織のリーダーの器ではないな。