●『ドイル傑作選I』 A・C・ドイル 翔泳社 読了。
副題に「ミステリー篇」とある。全体が三部構成になっており、まずは「ホームズ外伝」の部。戯曲「まだらの紐」は言ってみれば再話のようなもので、小説版に無いエピソードがちょいちょい追加されている。メインのネタはさすがにお馴染みだが、追加された違いこそが面白い。「消えた臨時列車」と「時計だらけの男」とは、どちらも謎が魅力的。だが前者はその真相が(伏字)で、シンプルな真相の後者に比べるとちと好みから外れる。
「奇妙な物語」の部では、「狐の王」に登場する王の不気味さが秀逸。一瞬のシーンがグロテスクな意味を持つ「深き淵より」は、本書中の個人的ベスト。
「冒険者たち」の部では、ボクシング小説、あるいは格闘小説「クロックスリーの王者」が最も読み応えがあった。展開はまあ予想通りではあるが。