●『大河内常平探偵小説選I』 論創社 読了。
途中で別の本を挟んだので、手に取ってから読了までに一週間もかかってしまった。
全六話で構成される連作短編シリーズ「夜光る顔」は、B級テイストが強くて読み口は軽い。だが意外なほどミステリの趣向も濃くて楽しい。場所を偽装するトリック、いくらなんでも無理がありそうな大掛かりな(伏字)トリック、痕跡を残さない殺人のアイデア、さらにはなんとチェスタトンのネタまで使われている。
シリーズのベストは第四話「消えた死体」で、この時代ならではの展開が、今読むとおそらく作者の意図した以上の効果をあげている。
「25時の妖精」は、突拍子もない怪作。序盤の海野十三か香山滋かというノリから、まさかの怪獣小説へ。やがて明らかになる主題は(伏字)。ところが物語はさらに発展……というより直角に折れ曲がり、なんでそうなるの、という方向に突っ走り始める。
ハチャメチャな展開ととっ散らかったテーマ。B級スリラーが行き過ぎて、ホラ噺になってしまった感がある。巻末解題によれば、連作短編を無理やり長編に仕立て直したことからこんな歪な作品になったらしい。
●注文していた本が届いた。
『悪魔博士 フー・マンチュー』 S・ローマー ヒラヤマ探偵文庫