●『五匹の子豚』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。
早い段階で、事件の枠組みが提示される。五人の中に犯人がいる。さてそこで期待するのは、クリスティーがどのような意外性を演出してくれるかである。枠組みの中に意外な犯人を潜ませているのか、それとも最後に枠組みそのものをひっくり返して見せるのか。
ところが、この作品の面白味はそういった意外性とは別のところにある。読み所は、ポアロの調査によって浮かび上がる人物像と、彼らの造形と密接に関係する伏線の解釈、といった辺り。
あの言葉は、あの行動は、あの記述は、こんな意味があったのかと分かる面白さ。ポアロが真相を確信するきっかけとなった(伏字)という情報の、シンプルさと解釈のお見事さも上々である。
これはいいものを読んだ。