中編が二編収録されている。
「おどろ踊り」
武州武甲山に巣くう狐遣いの集団。その討伐のため忍藩が差し向けた一行に、若さまが紛れ込んでいた。若さまは、江戸で起きた怪事件の遠因が武甲山にあると知って、真相を突き止めようとやってきたのであった。
いつもの捕物ではなく思い切って伝奇小説に振り切った作品。なんと、人狐入り乱れての妖術バトルが描かれる。こういうカッ飛んだ作品も、たまに読むなら面白い。
「千姫万姫」
柳沢家の一粒種万姫が、男を引き入れて色狂いをしているとの噂が立った。これではまるで吉田御殿の千姫である。柳沢家の親藩からの依頼で、この件を丸く収めて欲しいと若さまが頼まれた。
若さまの活躍がどうも少なかったのがちと残念。けれどもそれ以外は、忍者や侍のアクションがあり、お家にまつわる陰謀があり、の娯楽編。全面的なハッピーエンドではないけれども、全てが収まるところに収まる結末は気持ちがいい。さっと読むには十分の面白さである。