累風庵閑日録

本と日常の徒然

『飛鳥高探偵小説選II』 論創社

●『飛鳥高探偵小説選II』 論創社 読了。

 メインの長編「死を運ぶトラック」は、結末が(伏字)点を除けばなかなかの秀作であった。序盤の謎とそこから派生するテーマは、巻末解題にあるようにアイリッシュを思わせるサスペンスがあってなるほどと思う。警察の捜査の模様が主体となる中盤以降は、地味で堅実な展開が私好み。山峡の温泉場が舞台になるエピソードもあって盛り沢山である。

「拾った名刺」はヤクザの下っ端が我欲のために探偵役を務める設定が面白いし、結末も悪くない。「大人の城」と「猫とオートバイ」の二作は、叙情的と評するにはいささかハードだが、登場人物の心情が胸に迫る。

「狂った記録」は、堅実な展開の中にちょっとしたトリックが仕込まれていて読み応えあり。「狂気の海」と「お天気次第」とは、展開に捻りがある秀作。