累風庵閑日録

本と日常の徒然

「鉄人Q」

光文社文庫江戸川乱歩全集で、少年探偵団もの「鉄人Q」を読んだ。いい歳こいたおっさんが読んで楽しめるような作品ではないので、内容についてはコメント無し。

 ひとつだけ、終盤で明智小五郎が鉄人Qの数々の悪さを「あんなばかばかしいこと」と評しているのが笑える。しかも当のQ本人に面と向かって言い放っているのだ。それは言わない約束ではなかったのか。明智がまともに相手にしてくれなくなったら、怪人も立つ瀬が無いではないか。可笑しいけれども、切なくもある。

 主軸となるストーリーらしきものが無く、過去作品のモチーフが再利用されてその場その場にただ並べられているような展開は、いかにもシリーズの終焉を思わせる。いつまでも続くと思っていた楽しい追いかけっこにも、いつかは終わる時が来るのだ。陽が暮れて友達はみんな家に帰り、薄暗くなった原っぱにはもう誰も残っていないのだよ。