累風庵閑日録

本と日常の徒然

『マギル卿最後の旅』 F・W・クロフツ 創元推理文庫

●『マギル卿最後の旅』 F・W・クロフツ 創元推理文庫 読了。

 今や記憶も定かではない四十年近く昔、あかね書房の少年少女世界推理文学全集で読んだ。内容は忘却の彼方だし、今回は大人向けの訳だし、ほぼ初読と言っていい。

 なかなかの難事件で、捜査陣は何度も行き詰まる。だがその度に地道な捜査が奏功し、時には幸運も味方して新たに追及すべき道筋が見出される。倦まず弛まず事件解決を目指して歩を進めてゆくフレンチ警部の姿は、これぞ安心安定のクロフツテイストである。そして、地味で堅実なだけではないのがこれまたクロフツ流。きちんと外連味も用意されてあって嬉しい。

 フレンチは、この事件を解決すれば出世の足掛かりになると意気込む。つかの間の空き時間には、スコットランドからアイルランド方面の風景を旅行気分で楽しんでいる。微笑ましいことである。

 あまりにかっちりした内容で、読了するまでにちと疲れてしまった。だがその疲れは、長距離持久走を完走したような達成感と爽快感とを伴うものである。

●書店に寄って本を買う。
ビーフ巡査部長のための事件』 L・ブルース 扶桑社ミステリー
 リアル書店では今年初の本買いである。