累風庵閑日録

本と日常の徒然

『村山槐多 耽美怪奇全集』 学研M文庫

●『村山槐多 耽美怪奇全集』 東雅夫編 学研M文庫 読了。

 およそどんな対象にも、マニアさんはいるだろう。村山槐多マニアにとっては、本書は感涙ものの一冊ではないかと想像する。収録内容は小説に詩に、ノンフィクションの紀行文まで。なんと未完成の作品までもが収録されている。

 ところで、読者を選ぶ作品、という言い回しがある。残念ながら私は、本書に選ばれなかったようだ。特に詩なんてものは、活字の上を眼がただ滑ってゆくだけであった。詩に意味を求めるよりも感じることができる読者こそ、選ばれた者なのではあるまいか。そんな本が五百ページ近くあるのを一気に通読するのはしんどいので、先月から少しづつ読んでいった。

 わずかな例外で面白かったのが小説の三編。
「悪魔の舌」は何度目かの再読だが、以前の記憶よりかなり気色悪く感じる。どろどろと、だぶだぶと、といった擬音が酷い。幼少期は平気で触れた昆虫に、今はまるで触れなくなっているようなものか。

「魔童子伝」は、現代の機械文明と昔話めいた怪談咄との融合という奇想。「魔猿伝」はご機嫌なモンスター小説。

●書店に寄って本を買う。
『悲劇への特急券』 双葉文庫
 去年の九月に出た鉄道ミステリ傑作選の続刊、「昭和国鉄編II」だそうで。