累風庵閑日録

本と日常の徒然

『息子殺し』 R・ウィンザー カッパノベルス

●『息子殺し』 R・ウィンザー カッパノベルス 読了。

 原題の直訳は「三つの殺人動機」だそうで。作者の力点は、動機を含めた人間の情念を書くことにあるのだろうか。結末で出来上がった絵柄には関係者の様々な想いが絡みあっていて、小説を読み終えた満足感はある。

 とはいうものの、この作品は人間心理を追求したサスペンスではない。いかにもそれらしい名探偵が活躍する古典的なミステリである。脇役だと思っていた人達が、途中からにわかに重要性を帯びてくる展開が意外。事件の背景も意外だが、それを探偵が把握するまでの流れが(伏字)というのは、あまり感銘を受けなかった。

 こんな作品が七十年代に書かれたってえのが、刊行当時はひとつの読みどころであっただろう。今読むとあまり関係ないのだが。この作者の他の既訳作品二冊は入手済みなので、いずれ読む。

●同人誌『ネタバレ全開! 横溝正史読書会レポート集』の第二刷が出来。早速通販を始めて、この日記を公開する時点で在庫冊数が一桁である。ありがたいことであるが、どうしてそんなに、と不思議でもある。