累風庵閑日録

本と日常の徒然

『修羅櫻』 桃源社

●『修羅櫻』 桃源社 読了。

 合作時代活劇である。共著者として背表紙に名を連ねているのは、江戸川乱歩角田喜久雄城昌幸、陣出達朗、村上元三の五人。ところが奥付に著者としてあるのは陣出達朗のみ。実際は合作ではなく陣出の単著で、他の共作者は名義貸しということだろうか。ネットには情報がほとんどなく、作品成立に関する詳細は分からない。もしかして、乱歩の随筆なんかには情報があるかもしれない。

 内容はどうにもこうにもベタな娯楽時代劇。これはこれで楽しい。十六年前、幕府の黄金運搬隊を盗賊団雲切五人衆が襲撃したが、積荷は水野忠邦一派に横取りされてしまった。ところが、奪った荷物の中身はただの石ころ。水野一派は、黄金運搬団の宰領岸波半兵衛が事情を知っていると見て彼を誘拐し、黄金の在処を白状するよう今に至るも日々攻め問うている。

 半兵衛の息子又四郎は、今や二十三歳の青年に成長した。失踪した父を救い出し、同時に水野の非を暴くことを自らに課せられた使命と心得て、事件の詳細を知ろうと雲切五人衆に接触を試みる。

●せっかくだから、雑誌『時代映画』に掲載された、高岩肇の手になる「修羅櫻」脚本も読んでみた。展開が刈り込まれて整理されている。その一方で情報が増えて完成度が増したエピソードもある。なかなかの出来栄えである。