累風庵閑日録

本と日常の徒然

『川野京輔探偵小説選II』 論創社

●『川野京輔探偵小説選II』 論創社 読了。

 コメントを付けたいと思える作品は多くない。気に入ったのは以下の辺り。予想を超える展開が奇天烈な「夜行列車の見知らぬ乗客」、ビルが消えてしまうという謎の設定が魅力的な「消えた街」、真相が判明するきっかけが興味深い「女性アナウンサー着任せず」。ネタの着想が気に入ったのは、「団平船の聖女達」と「夜行列車殺人事件」と。

「犬神部落の幽鬼」は、わずか十数ページに大量の要素を詰め込んだ高密度の珍品。広島と島根の県境にある寒村を舞台に、代々犬神筋として恐れ忌まれている一家にまつわる奇怪な連続殺人事件。狂的な村の権力者だとか、犬神の呪いだとか、(伏字)だとか。どこかで読んだような設定がてんこ盛りで、なんとも微笑ましい。