累風庵閑日録

本と日常の徒然

『キング・コングのライヴァルたち』 M・パリー編 ハヤカワ文庫

●『キング・コングのライヴァルたち』 M・パリー編 ハヤカワ文庫 読了。

 フィリップ・ホセ・ファーマーキング・コング墜落のあと」は、キング・コング事件が現実に起きたという設定で、事件に関係した人間達の右往左往と、事件に関係なく営まれる日常とを回想形式で描く。それぞれのディテイルが面白い。

 ヒュー・B・ケイヴ「白い猿の儀式」は、速いテンポでカタストロフに向かって突き進む秀作。アフリカの現地人とのトラブルから悪夢が……というジャングル怪談の定石が上手くはまっている。

 第三部「王座をねらう者たち」は、巨猿以外のモンスターが登場する五編。バラエティ豊かで楽しい。そのなかで気に入ったのはヘンリー・カットナー「花と怪獣」とP・シュライヤー・ミラー「卵」で。前者は結末も含めてありがちな分かりやすさが、後者は馬鹿々々しくなる寸前の壮大さがいい感じ。