累風庵閑日録

本と日常の徒然

『黒き瞳の肖像画』 D・M・ディズニー 論創社

●『黒き瞳の肖像画』 D・M・ディズニー 論創社 読了。

 老女の遺した日記によって、彼女の少女時代からの人生をたどる。それなりに起伏のあるメロドラマで下世話な面白さはあるが、ミステリの面白さはない。というのが終盤までの感想である。

 だが読み終えてみると、なるほどこういう趣向か、と感心した。これはまぎれもなくミステリなのであった。終盤で見えてくる物語には異様な厚みがある。ページを後戻りして(伏字)場面を読み直すと凄味が伝わってくる。ちょいちょい伏線が仕掛けられてあったことが分かる。満足である。