●『エラリー・クイーンの国際事件簿』 E・クイーン 創元推理文庫 読了。
犯罪実話にはあまり興味がない。悲惨で陰惨で無惨な現実の犯罪の、どこをどのように面白がればいいのか。殺人が面白いのは、架空だからこそである。たまにでくわす犯罪実話は、読むのがしんどい。
ところが、だ。本書もまた実話ベースらしいのに、この面白さはどうだ。素材をどの程度アレンジしているのか分からないが、クイーンの物語作りの上手さなのだろう。
上手く膨らましたら長編になるようなミステリ味の濃い話から、異国奇譚風の奇妙な話まで、内容はバラエティ豊かである。ほとんどが長くても十ページほどの掌編なので、はい次、はい次と、どんどん続きを読みたくなる。短いから当然描写も会話も簡潔で、その点でも読みやすい。
ここでもう一度、ところが、だ。後半の「事件の中の女」パートになると急速に興味が薄れる。事件の面白さではなく、関係者の人間性に重点が移ってしまうのだ。つまりは普通の犯罪実話らしくなってしまう訳で、これでは読んでいて興味を感じ難くなる。ただし一編の例外があって、事件そのものが奇妙な「毒入りウイスキー事件」は面白かった。
前半を楽しく読んで後半をやや惰性で読んだ本であった。
●注文していた本が届いた。
『幽霊島』 楠田恭介 湘南探偵倶楽部
『爪』 大下宇陀児 湘南探偵倶楽部