累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ビッグ4』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『ビッグ4』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。

 ぼんやりと世評は知っていたので、期待値低めで手に取った。あらかじめそういう態度で臨んでも、こいつはちと厳しい。謎の中国人を首領に戴き、世界征服を目論む悪の秘密結社。様々な人物に完全に変装できる正体不明の暗殺者。秘密道具で危地を脱するエルキュール・ポアロ。そんな道具立てに荒唐無稽な面白さはあるが、それにしても、だ。

 巻末解説や訳者あとがきによれば、この作品は週刊誌に連載された複数の短編を長編の形にまとめ直したものだという。なるほどそれで、短いエピソードが積み重なるような構成になっているわけだ。クリスティー研究者の手元に、原型となった短編のテキストが残っていないのだろうか。できれば原型短編の形で読みたいと思う。