累風庵閑日録

本と日常の徒然

『奇想の森』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房

●『奇想の森』 鮎川哲也島田荘司編 立風書房 読了。

 日本ミステリの精選集だという全五巻のアンソロジー「ミステリーの愉しみ」の、第一巻である。なるほど収録作は粒揃いである。粒揃いとは、過去のアンソロジーにも収録された名作が多いってことで。それに今は論創ミステリ叢書で多くの作家に触れることができる。人気があって作品が多い作家なら、手軽に個人短編集が手に入る。

 そんなこんなで収録作の大半は既読であった。だが、名作は名作なだけあって再読でも十分面白い。個別の作品の感想は、今更感があるのでここには書かないけれども。

 アンソロジーの楽しさは、半ば埋もれたような珍品が収録されている点にもある。本書では横内正男「三行広告」が初読であった。軽味があって会話も面白く、意外性もある快作。活字になったのがこれ一作だとは残念である。主人公の摩耶流介シリーズとして書き継がれて、まとまった短編集として読みたかった。

 青池研吉「飛行する死者」は、以前何かのアンソロジーで読んだ気がする。だが、たぶんこれだと思っていた本には収録されていなかった。私の思い違いかもしれず、詳細不明である。

●注文していた本が届いた。
『黒兀鷲は飛んでいる』 T・ダウニング 綺想社
 実際は「黒」の字体が違うのだが、そっちは環境依存文字だということでやむを得ずこちらを使う。