累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ならず者の一生/幽霊ホテル』 W・コリンズ 臨川書店

●中断していた『ならず者の一生/幽霊ホテル』 W・コリンズ 臨川書店 を再開して読み終えた。

 中編が二編収録されている。「ならず者の一生」は、ちゃらんぽらんで前向きで逞しいならず者の冒険人生を描くピカレスク。世間に対する皮肉な視線が面白い。この時代らしいのんびりしたテンポが、ちとしんどかったけれども。

「幽霊ホテル」
 貴族の急死とその従者の失踪。そんなミステリめいた発端から、やがてじわじわと怪奇小説の色が濃くなってゆく。コリンズは本来長編型の作家だったようで。百六十ページのこの作品では、じっくりと構成を整えるページの余裕がなかったのかもしれない。怪奇現象の扱いも裏面の状況が明らかになるまでの展開も、残念だが中途半端に思えてならない。