●『怪奇クラブ』 A・マッケン 創元推理文庫 読了。
著者はスティーヴンスンの「新アラビア夜話」を意識していたそうで。なるほどと頷ける都市奇譚である。主人公格の人物はふたりいて、彼らが街で遭遇した見知らぬ人物達から奇怪な話を聴くという、枠物語の体裁になっている。
その主人公のひとりダイスンの造形がなんともいい感じなので。才能はないが文学を志し、芸術家気取りで世間の人々の日常生活を傍観している。親戚の遺産のおかげで喰うには困らず、おかげで呑気に時間を空費しながらボヘミアンの道楽生活を送っている。ある種の高等遊民といったところか。
彼らが聴いた物語のうち、特に「黒い石印」と「白い粉薬のはなし」とが気に入った。「黒い石印」は、実にもうオーソドックスな展開を見せる怪奇小説の好編である。発作を起こして見知らぬ言語を口走る人物。動物園の蛇の小屋で嗅ぐような異臭。音や臭いといった要素を少しずつ積み重ねて、じわじわと怪異を盛り上げていく。
「白い粉薬のはなし」は、題名の通り粉薬にまつわるグロテスクな物語。CGではなく昔の特撮技術を駆使して、デロデロの映像に仕立てて欲しい。
●書店に寄って本を買う。
『手招く美女』 O・オニオンズ 国書刊行会
●同時に、取り寄せを依頼していた本を受け取る。
『都筑道夫創訳ミステリ集成』 作品社
この二冊でほぼ一万円の金が飛んでしまった。大変なことである。