累風庵閑日録

本と日常の徒然

『シャーロック・ホームズ秘聞』 長沼弘毅 文藝春秋

●『シャーロック・ホームズ秘聞』 長沼弘毅 文藝春秋 読了。

 残念ながら今回はどうも低調であった。世界各地のシャーロキアン達との交流を記した章は微笑ましくはあるけれども、私の興味からはやや外れていた。私がホームズ雑学本に求めるのは、作品を深く理解するための足掛かりである。あるいは、作品を別角度から眺めるための、私とは異なる視点である。

 面白かったのは第二部第一章「エラリー・クイーン切り裂きジャック」で。クイーンの「恐怖の研究」のあらすじを追いながら、シャーロキアン的視点の解説を加えてゆく。クイーンが原典をよほどしっかり研究していることが分かって興味深い。

「恐怖の研究」は、何年前かはっきりしないくらい昔に読んだ。内容はすっかり忘れ果て、読んだ、という記憶しか残っていない。いつか機会があれば再読したい。ってなこと書いといて、平気で十年くらいは経ってしまうんだけれども。

 第二部第二章「切り裂きジャック諸説」は、現実の切り裂きジャック事件をホームズ譚のなかに組み入れようとする試みの紹介である。一点だけ、ワトスンのファーストネーム混乱問題を上手くこのネタに盛り込んだ手際は上手いと思う。

●定期でお願いしている本が届いた。
『悪魔を見た処女』 E・デリコ C・アンダーセン 論創社