累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ホッグズ・バックの怪事件』 F・W・クロフツ 創元推理文庫

●『ホッグズ・バックの怪事件』 F・W・クロフツ 創元推理文庫 読了。

 居間でくつろいでいた人物が、家人がちょっと目を離した数分後には部屋着、室内履きのまま失踪した。なるほど怪事件である。捜査を担当するのはお馴染みフレンチ警部。彼は何度も何度も壁に突き当たり、それでもあきらめずに丹念な捜査と緻密な考察とを積み重ねる。関係者のどんな証言もおろそかにせず、必ず裏を取る。当然の捜査手順なのだろうが、クロフツはそういった描写をひとつひとつ執拗に書いてみせる。好みの話だけども、これがすこぶる面白いのだ。安心安定のクロフツ印である。

 フレンチの人間味も微笑ましい読みどころ。土地の警察から借りた自転車であちこち捜査に赴きながら、一見平和な田舎の風景を楽しむ。思考が行き詰ったので頭を切り替えるために、映画やピクニックを楽しむ。結末で、事件を解決したことで上司からの評価が高くなることを密かに喜ぶ。

 肝心の真相は、残念ながらちょっと冷静になる内容であった。手掛かり索引の趣向は楽しいし、犯行計画はよく練られていると思うけれども。当然ここには詳しく書けない。以下、自分の心覚えのために非公開で書いておく。(一段落非公開)

●書店に寄って本を買う。
『吸血鬼文学名作選』 東雅夫編 創元推理文庫