累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ようこそウェストエンドの悲喜劇へ』 P・ブランチ 論創社

●『ようこそウェストエンドの悲喜劇へ』 P・ブランチ 論創社 読了。

 舞台は、今にも潰れそうな雑誌の編集部。ある主要メンバーが狂言自殺を企てたことがきっかけで、てんやわんやの大騒動が持ち上がる。関係者それぞれの勝手な思惑と誰にも予期できない偶発事とが複雑にからみ合い、事態は紛糾してゆく。

 素晴らしく面白い、ハチャメチャなコメディであった。また、作者の構成力にも感心する。相互に因果関係があるような無いような膨大な要素の数々を、筆先で自在に操って物語を紡ぎだす力量はなんとしたことか。この精緻さは、コメディということもあってウッドハウスを連想する。

 ところで、巻末の訳者あとがきで初めて知ったのだが、パメラ・ブランチの第一作が約三十年前に翻訳刊行されているのだそうな。こんなに面白い作家なら、ぜひ読んでみたい。なんらかの形で再刊されることを願っておく。

◆追記
 ツイッターで、某氏から情報をいただいた。国書刊行会で来月から始まる「奇想天外の本棚」のシリーズで、上記ブランチ第一作の刊行が予定されているそうで。ありがたいことである。

●書店に出かけて本を買う。
シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』 J・ラヴグローヴ ハヤカワ文庫