累風庵閑日録

本と日常の徒然

『八人の招待客』 Q・パトリック 原書房

●『八人の招待客』 Q・パトリック 原書房 読了。

 原書房版奇想天外の本棚の、第三巻最終巻である。約百ページの中編が二編収録されている。クリスティーの「そして誰もいなくなった」と同趣向というウリだったからもう少し派手な外連味を期待していたのだが、予想外に小粒な作品であった。予想外ってのは、勝手に期待した方が悪い。そもそも読めることに大いに意義があるのだ。こうやって刊行されたのはありがたいことである。

「八人の中の一人」
 メインの趣向がまあありがちな、型通りのミステリ。それよりも、発見された(伏字)の一種であって、この展開はちょっと面白かった。

「八人の招待客」
 ストーリーの起伏で読ませるタイプ。(伏字)という伏線がミステリ的な妙味であるが、結末部分が推理による解明というより作者の説明のような展開で、あまり感銘は受けなかった。