累風庵閑日録

本と日常の徒然

『永久の別れのために』 E・クリスピン 原書房

●『永久の別れのために』 E・クリスピン 原書房 読了。

(伏字)るというメインのネタが、事件の構造をひっくり返すと同時に犯人に直結している。また、この段階で事件の真の姿が見えてくると、凶器に関する以前の記述が活きてくる。それとは別にとある小道具の扱いは、これまた犯人に直結している。この辺り、シンプルな犯人限定の流れは上手いと思う。

 上記の点だけでもそれなりに高い点数を差し上げたいのだが、本書の魅力はそれだけではない。会話にも描写にも漂うユーモアがじわじわと可笑しい。秀逸な表現があちこちに見られて、にやりとしてしまう。こういうのは読んでいて楽しい。今年読んだ中で特に面白かった本のリストに、確実に入選する秀作であった。

●書店に出かけて雑誌を買う。
『新潮 2023.1』
 坂口安吾の新発見探偵小説が掲載されているというので、買ってみた。