累風庵閑日録

本と日常の徒然

『狙った獣』 M・ミラー 創元推理文庫

●『狙った獣』 M・ミラー 創元推理文庫 読了。

 心に闇を抱えた主人公が、同じく闇を抱えた過去の友人に付け狙われる。かの人物の狂気は深く憎しみは強く、周囲にまで不安と恐れとを撒き散らし、悲劇を拡散してゆく。主人公の知人が依頼を受けて相手を探し始めるが、探索の過程で出会う関係者の多くもまた、闇を抱え歪んでしまっているのであった。

 戦争が終わって十年、安定と繁栄とを謳歌するアメリカの影の部分に蠢く人々を描いて緊迫感が凄まじい。結末はなんとなく想像できたけれども、これだ、と思う。これがマーガレット・ミラーだ。傑作である。