累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十二回 「白衣組」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十二回。今回は第七巻から「白衣組」を読む。舞台は十四世紀半ばのヨーロッパ。イングランド修道院で養育された主人公アレインが、二十歳になったのを機に実社会での経験を積むべく旅立つ。下賤で、荒っぽくて、生命力に満ちた外の世界に驚き戸惑うアレイン。やがて彼は兵士となり、対フランスの戦争に従軍することになる。

 英雄豪傑が馳せ違う合戦の場面や、多彩で個性的な人々に接しながら成長してゆくアレインの冒険譚は、そりゃあ面白い……はずなのだ。だが、読んでいるうちにだんだんしんどくなってきた。何がしんどいってとにかくもう、会話が冗長でまどろっこしいのだ。また、物語の本筋に直接関係のないエピソードがやたらに多くて、展開がどうにものんびりしている。

 大仰な会話と悠々とした展開が二段組みにみっちり詰まった四百ページは、やれやれ、長かった。検索してみたら、一部の登場人物を女性化した超訳があるらしい。ドイルの著作権は切れているので、そういうのもありなのだろう。ならば、簡潔な会話とスピーディーな展開とに仕立て直した再話バージョンなら、もっと楽しめるかもしれない。