累風庵閑日録

本と日常の徒然

『橘傳來記』 山田風太郎 出版芸術社

●『橘傳來記』 山田風太郎 出版芸術社 読了。

 副題に「山田風太郎初期作品集」とある。若かりし頃の投稿作品集である。収録作の多くが雑誌「受験旬報」に掲載されており、当然のように受験を題材にしている。これがどうも、私自身の受験期の焦燥感、あるいは不安感のようなものが思い出されてしんどい。もう数十年も昔のことだというのに。これも風太郎の筆力のなせる技か。

 風太郎の文章の、密度と熱量とは大変なものである。読んでいてぐったりしてしまう。作品の質とは無関係だが、同じ題材が続くと飽きてくる。同調圧力で個を否定し個を踏みにじる、戦前の世の中の在り方が、とにかく疲れる。ってな要素がいろいろあって、到底軽々と読み進めることはできない。休み休み読んで、二百四十ページのこの本に三日かかってしまった。

●書店に出かけて本を買う。
『禁じられた館』 M・エルベール&E・ヴィル 扶桑社ミステリー
『孤島の十人』 G・マクニール 扶桑社ミステリー