累風庵閑日録

本と日常の徒然

「人形佐七捕物帖 くらやみ坂の死美人」

●昭和三十五年の東映映画「人形佐七捕物帖 くらやみ坂の死美人」を観る。若山富三郎が人形佐七、大泉滉が辰五郎という配役である。盛り場を牛耳っているごろつき集団蝙蝠組を相手に、佐七の法善流棒術がうなる! 要所要所でやけに長尺の立ち回りが挿入される辺り、いかにもな大衆娯楽時代劇である。ところが本作はそればかりではない。なんと起きる事件は、逃げる余地がなかったはずの犯人がどこにもいないという不可能犯罪なのである。

(伏字)トリックが使われていたり、全然意外ではないが「意外な犯人」が設定されていたり。早い段階で、真相を示す伏線が設定されているのも興味深い。上手く機能しているとは思えないけれども。全体は他愛ないがミステリの構造を備えていて、なかなか楽しい出来栄えであった。