●『ゴルファー シャーロック・ホームズの冒険』 B・ジョーンズ ベースボール・マガジン社 読了。
イベントやなんかで読書時間を確保できず、三百ページに満たないこの本に五日もかかってしまった。ホームズは探偵活動と同時並行でゴルフにも熱心に取り組んでいた、というパスティシュ集である。ホームズはゴルフ界隈の様々な事件や問題を、持ち前の観察力と推理力、そして超一流のゴルフの腕前で解決する。作品世界の基本設定や原典との関係などがよく作り込まれていて、無理やり感がないのが高評価。
原典との関係とはたとえば、ワトソンがホームズのゴルフの腕前について全く語っていない理由、あるいはホームズがコカインを耽溺するに至った理由など。探偵活動のパートナーはワトソンだが、ゴルフに関わるパートナーはスタンフォードである。そう、「緋色の研究」でワトソンをホームズに紹介したあの彼だ。もちろんモリアーティも、ゴルフにまつわる悪だくみでホームズと対決する。
ホームズに少々人間味がありすぎるようだが、基本的には無理のない造形になっている。個別の作品でゴルフとホームズとを関連付ける手際にそつがなく、人生の全ての問題を料理で解決するマンガみたいな、馬鹿馬鹿しさ寸前の微笑ましさがある。収録された一連のゴルフ話が世に出た顛末はいかにもそれっぽい。そんなこんなでパスティシュの佳品であった。