累風庵閑日録

本と日常の徒然

『扉の影の女』 横溝正史 角川文庫

●『扉の影の女』 横溝正史 角川文庫 読了。

 今度の日曜に開催される朗読劇の題材が、この本の表題作である。そこで予習として、久しぶりに再読することにした。前回読んだのは約九年前である。今日の日記は、その時の記述を多少修正を加えて再録する形になる。

 捜査の過程をじっくり描く作風は、いわゆる「警察小説」だの「私立探偵小説」だのの味わいで、読み返す度に面白さが深まってゆく。金田一耕助が警察機構とは独立した私立探偵であることがきっちり描かれているし、ミステリとしては破格の腰が抜けるような真相も相まって、金田一シリーズ中の異色作である。

 同時収録の「鏡が浦の殺人」は、クリスティーとクイーンの遠い谺が聞こえるような作品。終盤のとある挿話が、読み終えて初めて分かるサスペンスを孕んで秀逸。

●書店に寄って本を買う。
『死と奇術師』 T・ミード ポケミス