累風庵閑日録

本と日常の徒然

『シシリーは消えた』 A・バークリー 原書房

●『シシリーは消えた』 A・バークリー 原書房 読了。

 ミステリの面白さにはいくつかの種類がある。本書は、キャラクターと展開の魅力で読ませる作品。つまり、結末でロジックや伏線の妙に感心するよりも、読んでいる間ずっと面白いタイプの作品である。

 田舎の屋敷で開催された交霊会で、呪文をかけられたシシリー嬢が消えてしまった。会場となった客間から外部に通じるドアにも窓にも、傍にはずっと人がいて気付かれずに通り抜けることは不可能である。といった不可能興味の謎に、若い男女ペアが取り組む。(伏字)だという真相の周辺を、彼らはぐるぐる周回しつつ、様々な可能性についてディスカッションしつつ、ついでに互いの気持ちにも想いを巡らす。二人の境遇や会話に明るいユーモアが漂って、読んでいる間ずっと面白い。

●注文していた本が届いた。
『秋聲翻案翻訳小説集 世紀末篇』 徳田秋聲記念館文庫
 以前「怪奇篇」が出た本の続編である。