累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十六回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十六回として、第八巻の短編集「最後の戦艦」から、表題作を含む前半の十編百ページほどを読んだ。歴史の一コマを切り取って小説に仕立てた作品が多い。気に入った作品は以下のようなところ。

 おそらく現代の夫婦がローマ時代の遺跡を訪れ、前世の記憶として当時の争乱の模様をまざまざと幻視する「戸張のうち」、ローマ帝国人皇帝マクシミンの半生を描いた「巨漢マクシミン」、ヨーロッパの転換点となった匈奴の侵攻を、辺境に隠れ住む隠者の目で捉えた「匈奴の襲來」、ローマがブリタニアを放棄して後、侵入してくるゲルマン民族の拠点に赴いた使者の見聞記「最初の積荷」、まだ数百人の信者しか持たない若き日のマホメットに出会った貿易商の話「赤い星」といったところ。長くても十数ページの分量の向こうに、ダイナミックな歴史の動きが垣間見えて面白い。

●書店に寄って本を買う。
『すり替えられた誘拐』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫
『迷いの谷 平井呈一怪談翻訳集成』 創元推理文庫

●定期でお願いしている本が届いた。
『愛の終わりは家庭から』 C・ワトソン 論創社

●今月の総括。
買った本:十四冊
読んだ本:十冊
 今月は文フリがあったので購入数も多めであった。