累風庵閑日録

本と日常の徒然

『サハラに舞う羽根』 A・E・W・メースン 創元推理文庫

●『サハラに舞う羽根』 A・E・W・メースン 創元推理文庫 読了。

 熱い物語であった。三角関係どころか、四人の男女の惚れたハレたが熱っぽく語られる。同時に、主人公の名誉回復と成長の物語でもある。ひたすら相手の幸せを願い、自らの信条に基づいて自らを犠牲にする人々。失われた自分を取り戻すため、全てを捨てて命がけの冒険に挑む主人公。そんな彼らの愛や誓いや友情などが、古風で大仰な語り口で熱くつづられる。

 作品の主な舞台はアイルランドと、反英独立紛争が勃発しているスーダンである。熱い物語であると同時に、暑い物語でもあるのだ。中盤以降にメインテーマとなるのが、スーダンの砂漠地帯における暑く過酷な(伏字)計画で、これはもうド直球の冒険小説である。いやはや、面白かった。