累風庵閑日録

本と日常の徒然

『夢遊病者の姪』 E・S・ガードナー ハヤカワ文庫

●『夢遊病者の姪』 E・S・ガードナー ハヤカワ文庫 読了。

 ペリイ・メイスンシリーズを読むのは数十年ぶり二冊目。前回がいつで何を読んだかは、とうに忘却の彼方である。法廷ものってのはなじみが薄いので、なかなかに新鮮であった。メイスンが駆使するロジックは、真相に到達するためのものばかりではない。検察側を出し抜くためにもロジックを駆使し、罠を仕掛け策略を練る。主人公の造形がよくある奇矯な名探偵型ではなく、徹底した実務家肌だってのも新鮮であった。多くの人間を雇ってそれぞれに適切な指示を出し、てきぱきと物事を処理してゆく様は、読んでいて爽快である。

 内容としては、ある証言の意味合いがぐるっとひっくり返るのがひとつの読みどころ。また、ある要素がぎりぎり終盤まで隠されていて、ぱっと明らかになることで(伏字)が否定され、メイスンが見抜いた解決につながってゆく展開が鮮やかである。この要素が作品のキモであろう。

 さて、本書を手に取った目的は、横溝正史との関連にある。正史自身がとあるエッセイで、この作品が自作「夜歩く」になったと記しているのだ。そこでまず「夜歩く」を読んで記憶を新たにしたうえで、本書を手に取った。結論として、夢遊病者の殺人および鍵のかかる場所に保管された凶器の刃物、という要素が「夜歩く」に活かされているようだ。