この本を買った目的は、ジョン・スラデックのサッカレイ・フィンものが収録されていることにある。だが、今のタイミングで手に取った目的は他にある。収録されているフランク・グルーバーの六十ページの作品「ソング・ライターの死」と、論創海外ミステリの新刊「ソングライターの秘密」との関連をチェックしてみたかったのだ。「ソング・ライターの死」は、人間百科事典と自称するオリヴァー・クエイドと相棒チャーリー・ボストンのシリーズである。
結論として、「ソングライターの秘密」はまぎれもなく、「ソング・ライターの死」の主人公を変えた長編化であった。「~死」における最初の殺人の場面はこうだ。主人公達がいるバーで、ソングライターを名乗る男が自作の歌を披露しようとして、ピアノ弾きに演奏を頼んだ。彼がいざ本格的に歌い出そうとしたとき、飲んでいたビールに仕込まれていた毒によって死んでしまった。その後の展開や真相がどのようにアレンジされているかは、言わぬが花。
本来の目的だったジョン・スラデック「見えざる手によって」は密室殺人で、その点は魅力的。だが真相はいくつもの前提が必要で、申し訳ないがあまり感銘は受けなかった。
個人的ベストは、クイーンパロディであるアーサー・ポージス「イギリス寒村の謎」。馬鹿馬鹿しさの中に、クイーンの特徴である言葉へのこだわりが上手く盛り込まれている。
●書店に寄って本を買う。
『スミルノ博士の日記』 ドゥーゼ 中公文庫
東都書房版で既読だが、こういうのはつい買ってしまう。